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面影を重ねて

レト先蒼月ルートを夢に見るシルがレス先黒鷲寮に編入し、レス先にレト先を重ねる話〜元生徒にどうして俺を選んでくれなかったんだと聞かれて困るTS先生の巻〜


 夢を、見ている。
夢の中の貴方は何かを喋るでもなく、ただこちらをじっと見ている。見慣れてしまった透き通るような新緑の髪と同色の瞳が優しげに見つめている。
顔にあまり感情の出ない人だったから、無表情に見えても何かを考えているのかもしれない。
優しい人だった。口数の多い人ではなかったけれど、彼の優しさや頼もしさを俺たち生徒は誰よりも尊敬している。
なあ、先生。俺、あんたの事が好きだったんだ。優しいところも、頼もしいところも、案外抜けてるところも、全部。
妬ましくて、憎らしかった。でも自分にないものを持ってるあんたのことが好きだった。
だから、そんな困ったような顔をしないで欲しい。
ゆっくりと先生の姿が白けていく。もうすぐ目が覚める時間だ。
白んで消えていく視界に先生の言葉がこびり付いた。

黒鷲寮へ新任した先生はそれはそれは大層美しい女性だった。元傭兵だという彼女は少し世間慣れしていないところもあるが、先生としては申し分なく生徒に慕われている。
黒鷲寮への変寮を何度も考えた。
別に担任の先生に不満がある訳では無い。自分のやりたい方向を伝えていればきちんと親身になってくれる。寮生ともそれなりに上手くやっているので特段なにかある訳でもないんだが、黒鷲寮に来ないかと誘われるものと思い込んでいただけに拍子抜けだ。元寮生のアッシュやメルセデスには先生が声をかけて回っていたのもあるかもしれない。
待ちかねたのでこちらから変寮したいと申し出るとあっさりと受理されてしまった。
黒鷲寮へ変寮してからしばらくして、食堂側の木陰で猫や犬と戯れているのを見た。どうやら餌を与えているようだ。
こちらの視線に気づいたのか、透き通るような新緑の瞳がこちらを見つめている。夢に見た瞳と重なる。
「どうかしたの?」
「いや、そのですね、あんたはどうして黒鷲寮を選んだのかなと気になって」
どうして青獅子を選んでくれなかったのだろうか。
彼女にするつもりの無かった質問がするりと口をついて出た。
言ってしまったのは、夢に見た愛おしい新緑の瞳と重なったからだろうか。
「すまない」
白んでいく景色の中でこびり付いた言葉が聞こえた。
目の前の彼女は申し訳なさそうな顔をしている。今は昼間で夢ではない。
「なんとなく、エーデルガルトのことが放っておけなかったんだ」
殿下にはあんたが必要なんだ。
喉元まで出かかった言葉を必死に押し込み、言外の言葉を探してみるけれど、どうやら言葉通りの意味のようだ。
「話は終わりかな?」
「お時間取らせてすいません」
明るい調子で言われた言葉に引き下がるしかない。まだまだ聞きたいことはあったが、今は聞けそうにない。

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